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2011.11.13 Sunday
プロジェクト大山の特徴 松岡綾葉
ややっ、金沢公演がおわって、 あっというまにいろんなことに追い立てられていま!
迫りくる助成金の書類提出に こういうのがメンバーのなかで一番苦手であろうわたしは アヤハさんに救いの手を求めた。 そして届いた。 いろいろ面白かったので全文をここに記載す。
松岡綾葉 プロジェクト大山(以下、「大山」と略す)の主たる特徴は、主宰古家の個人的嗜好による創作の起点と、共通の大学出身であり、様々な身体を持つ女性メンバーによるところが大きいだろう。以下、特徴5点を挙げ、それぞれについて述べていく。 1)お茶の水女子大学舞踊教育学コースという共通のバックボーン まず特筆すべき特徴の一つに、10人(2011年11月時点)いるメンバー全員がお茶の水女子大学出身という共通の背景が挙げられる。大所帯のグループは、コンテンポラリーダンスのカンパニーとしては珍しい。また近年大人数構成の女性アイドルグループが人気を博していることもあり、非常に話題性がある。 大学名だけで判断するなら彼女達は名門女子大出身のエリートだ。しかし舞踊教育学コースは、「お茶の水女子体育大学」と揶揄されているように(出典不明)、非常に限定的で特殊な学科であり、彼女達はいわゆる世間一般で認識されているような大学教育とは異なる学生生活を経てきている。そしてこのバックボーンには、宝塚音楽学校のような華やかなブランド性も無ければ、日本大学芸術学部(「珍しいキノコ舞踊団」の出身校)のような知名度の高い大衆性を確立している訳でもない。 お茶の水女子大学舞踊教育学コースはその知名度の低さ・閉鎖性ゆえに、彼女達が「専門的な高等訓練を受けた舞踊のエリート」なのか、「閉鎖空間で育てられた舞踊の不穏分子」なのか謎に満ちており、それゆえ観客の関心を集めやすい。共通の出身大学を持つ女性達というメンバー構成はプロジェクト大山の特徴を述べるにあたっての最重要前提であろう。 2)主宰古家の私的な嗜好・日常動作 次に注目すべき特徴は、主宰古家の振付の出発点となっている個人的嗜好と日常動作である。 個人的嗜好においては、古家は様々な生物達(動物、昆虫、鳥類等)の動作に常々興味を持ち、それらの動作の実践を試みる。(当然人体では実践不可能であることが多い。)また実在する生物だけではなく、伝説・想像上の生物にも注目し、その動作を想定する。そして、関心を持った生物の動作の選定が「○○鳥の発情期の動作」・「猫が毛玉を吐く動作」等、非常にマニアックである。 この他、古家のインスピレーションの元として、ヒンドゥー教絵画のポーズやメンバーによる日常生活のエピソードなどがある。特にヒンドゥー教絵画のポーズのような丸みを帯びた女性らしい体つきに魅力を感じ、いかにして女性の身体的特徴を生かし見せるかということに古家は常に取り組んでいる。 古家の日常動作については、彼女は日頃から癖となっている身体の動きをそのまま振付に応用している。当然、個人的な癖であるために、他のメンバーが理解し動きを再現することは難しい。 以上のように、振付の起点となっている源泉は非常に私的である。芸術作品というのは凡そ私的なものであるが、古家の場合は非常に特殊、つまり多くの人と共有できるようなイメージや感覚とは少し異なる。古家の普遍的でない特異な感性が、作品をありふれた概念から脱却させ、新鮮味をもたらしているのである。 3)意味を求めない作品世界 概して芸術作品には作者による何らかのメッセージや意図が込められるもので、当然観客はそれを求めて鑑賞する。しかし、大山の作品には作品主旨やストーリーが明確でないことが多い。脈絡があるのか、ないのか、それはまるで小さな子どもが思いつくままに好きに話しかけてきて自由に遊んでいるようなものである。「意味を作り出すことがそれほど重要なことなのか?」古家の疑問がそのまま作品に表れているといっても過言ではない。 4)メンバーの様々な身体 共通のバックボーンを持ちつつも、メンバーは身体的にも内面的にも個性豊かで様々ある。古家の私的な空間から生まれた動きは、このような多様な彼女達によって再現される。訓練によって、きっちりと揃えて踊るところもあるが、メンバーによって再加工され古家の当初の意図とは異なる方向へ飛躍することもある。群と個をいかに使い分けて見せるか。大人数編成カンパニーだからこそできる見所である。 5) 音楽と衣装 作品の構成要素である音楽・衣装についても大山を特徴づける重要なポイントである。音楽・衣装共に実力ある専門のスタッフが製作し、作品をよりオリジナリティあるものにしている。大山の公演アンケートにおいて、衣装・音楽に対するコメントは非常に多い。特に音楽については「CDを出して欲しい」と熱望する声も聞かれる。 また、衣装では一分丈のパンツで足を見せる作りになっており、女性性が強調されている。頭はすっぽりと布で覆われることが多く、非日常的で異空間の生物のようなイメージや没個性化をもたらしている。 これら音楽と衣装の要素が古家の作り出す特異な動きと合わさって、大山の「キャッチー」で「どこかヘンテコ」な作品世界が構成されるのである。 以上から、大山の特徴として「共通のバックボーンを持つ大所帯女性ダンスユニット」であること、「主宰古家の私的な興味・日常動作に基づく特異な身体動作」、「意味を求めない作品世界」、「メンバーの様々な身体」、「音楽と衣装」の4点を挙げた。これらの特徴によって、プロジェクト大山は独自の作品世界を構築し、観客の関心を集めている。今後どのような作品が生まれてくるのか期待をもたらすカンパニーであろう。
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今後の主な予定
プロジェクト大山 新作公演
「それでもおどって」 2016年10月21日(金)〜23日(日) @シアタートラム MOBILE
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